患者・家族・地域の心の壁を取り除く、開かれた精神科病院 「リカバリーをサポートする環境」づくり 施設全体のコンセプトとしては、自然に包まれた豊かな環境の中で、1.地域との交流エリア、2.通院やデイケア等、院外から利用するエリア、3.入院治療の落ち着いた療養環境を保持するエリアの3つのエリアを緩やかにつなぎ、病院の中に社会との接点となる場を設け、リカバリーをサポートする環境づくりをめざしました。 新病院のコンセプト 地域に開かれた交流プラザ 地域に開かれた病院を具現化する空間として、1階のデイケアと作業療法の中心に交流プラザを設け、ガラス張で視覚的につなげ、イベント時にも相互に利用しやすい配置計画としました。交流プラザにはカフェを併設する他、音楽演奏会や陶芸作品展示、創作活動への参加等、様々な交流やアクティビティが生まれる「きっかけとなる場」とし、リカバリーを支援する場としての利用も期待しています。 交流プラザの位置づけ 状態に応じて、居場所を自由に選択できる優しい病棟 患者さんがその状態に応じて、様々な形やスケールで人との関係を保つことができるよう、1.ひとりの空間、2.家族規模の空間、3.社会的空間という段階的な生活領域を設け、患者さんひとりひとりが居心地の良い場所を選択できる病棟計画としています。 廊下にも自然光が差し込むスリット窓とベンチを設けることで、廊下も良好な療養環境の一部としています。自然と病室から出たくなる病棟づくりは、環境にも配慮したつくりとなっています。 西棟病棟平面 プライベートな個人領域を確保した4床室 4床室は、全てのベッド廻りにそれぞれの窓を設け、患者さんの好みに応じて光や風のコントロールを行えます。また、ベッド間には、デスクやテレビ台を組み込んだ収納ユニットを設け、個人のプライベート空間をゆるやかに形成します プライバシーに配慮した4床室ベッド廻り 緑豊かな療養環境を享受する高さを抑えた分棟配置 豊かな木々を近くに感じられるよう階数を抑えることで、精神科医療の療養環境として望ましい落ち着きある施設とし、周辺地域の良好な住環境にも配慮しています。 必要な機能を分棟配置し、建物の間に木々を植えることで、建物内外に緑豊かな環境を創出しています。 高低差のある自然地形を活用した動線計画 豊かな緑を大切にした、温かみある療養環境をつくる 既存樹木をなるべく切らない 本院は豊かな緑に囲まれた場所でした。全面建て替えに先立ち、1本でも多くの樹木を残すため、高木ひとつひとつに番号をつけました。その数744本。その中から、樹木医の先生のご指導をいただきながら、残すべき木を丁寧に選定しました。 交流プラザの南庭にある丘の上にたたずむ推定樹齢80年の桜の大木は、その中の1本です。地域交流のシンボルとして、新たな役割を担います。 保存樹木選定会の様子 伐採した樹木は有効に使う 伐採せざるを得なかった樹木の一部は、地域連携の窓口やデイケアのカウンターとして、そのまま利用しています。 愛知県の森を効果的に活かす 住まいのような落ち着きと安らぎを与える空間づくりを目指し、愛知県産の木材を効果的に使用しています。県産材を利用することで、森林整備を促進し愛知県の森を守る一助となります。 交流プラザ天井:ヒノキ材 屋内運動場壁:ヒノキ材 建物概要 病院概要 病床数:273床(フルオープン時) 診療科目:4科/精神科、児童精神科、内科、歯科 工事概要 所在地:名古屋市千種区徳川山町 地内 地域地区:都市計画区域内,第一種住居地域,準防火地域 敷地面積:48,635.03㎡ 建築面積: 5,763.47㎡(前期工事分)2,634.14㎡(後期工事分) 延床面積:15,009.11㎡(前期工事分)5,830.11㎡(後期工事分) 構 造:鉄筋コンクリート造 ※一部鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄骨造 階 数:地下1階、地上4階、塔屋1階 最高の高さ:18.08m 工 期:平成26年2月14日~平成30年8月31日(前期・後期工事) 設計監修:有限会社 建築計画連合 設計・監理:株式会社 久米設計 施 工:株式会社 熊谷組 名古屋支店